〜オレンジ色の縮み薬〜





あの一件があった後、はグリフィンドール寮に真っすぐ戻った。
しかし居るはずのハリー達の姿が見当たらなかった。


「ねぇ、ハリー達知らない?」


すぐ近くに居たジニーに聞いたが、ジニーは首を横に振った。


「見なかったけど」


するとちょうどよく肖像画が開く音がしてハリー達が戻ってきた。


「もぅ、どこへ行ってたの?」


「ハグリッドのとこ」


疲れたようにロンが言った。


「私達ハグリッドの様子を見に言ったんだけど、
落ち着いた途端追い出されちゃったのよ」


「僕が外に出ちゃいけないからだって」

ハーマイオニーもハリーも肩をすくめて言った。
いろいろありすぎて疲れている3人にあまり深く
追求しないではそっとしておいた。








木曜日。
スネイプの魔法薬学の授業では『縮み薬』を作る事になった。
スネイプが調合の手順を教えている時に、教室の扉が開く音がした。


「座りたまえ、さぁ」


入ってきたのはドラコだった。
右腕は包帯を巻いて吊っていた。
隣ではパンジーが心配しているのが見える。




(よりにもよって・・・セブルスの授業だもんなー)




は心の中で何か起きない事を祈り、自分の鍋を用意し始めた。
案の定、ドラコはハリーとロンと同じテーブルになった。


「ちゃっちゃとやるか・・・」


誰に言うでもなく呟いたは作業に取り掛かった。



「先生ー」


暫くすると、後ろのテーブルでドラコの声がした。


「先生、僕、雛菊の根を刻むのを手伝ってもらわないと、こんな腕なのでー」


「ウィーズリー、マルフォイの根を切ってやりたまえ」




(やっぱり始まった)




他の生徒より作業が早いのか、いや作りなれているのか、
はもう半分まで終っている。意識だけは後ろのテーブルだ。


「せんせーい」


再度ドラコの声が聞こえた。


「ウィーズリーが僕の根をめった切りにしました」


それを聞いたスネイプはの横を通り過ぎ、ロンの所へ行った。


「ウィーズリー、君の根とマルフォイの根を取り替えたまえ」


「先生、そんなー!」


「いますぐだ」




(あぁ・・・前を向いていても目に浮かんじゃう)




は溜息をつきながら、仕上げの段階で『縮み薬』を煮込み始めた。


「先生、それから、僕、この『萎び無花果』の皮をむいてもらわないと」


「ポッター、マルフォイの無花果をむいてあげたまえ」


スネイプがハリーに冷たく言い、別のテーブルに行ったのを見計らって、
は後ろを振り向いた。



「ドラコ、私がやってあげるわ。ロン、よかったら私の余った根を使ってちょうだい」


はロンに根を渡し、ハリーの手から無花果を取った。


!?」


「あぁ、私はもう一通り終ったから手伝いに来ただけ」


てきぱきと作業をするに、ハリーとロンは驚いた。


「そうじゃなくて!なんでマルフォイのことっー」



「2人も黙って。減点されても知らないわよ」



ロンの言葉をは睨みで遮った。
ハリーとロンは顔を見合わせ、そしてマルフォイを見た。
そのマルフォイは、何とも得意げな顔をしていた。




「誤解しないでね」




それだけは言った。
その後は黙々と材料を切っていたが、
隣でヒソヒソと話しているのは聞かなかった事にした。



数個先の鍋では、ネビルが薬をオレンジ色に作ってしまいスネイプに怒られていた。


「オレンジ色。君、教えていただきたいものだが、君の分厚い頭蓋骨を突き抜けて
入っていくものがあるのかね?我輩ははっきり言ったはずだ。ネズミの脾臓は一つでいいと。
聞こえなかったのか?ヒルの汁はほんの少しでいいと、明確に申し上げたつもりだが?
ロングボトム、いったい我輩はどうすれば君に理解していただけるのかな?」




(よくもまぁ・・・いろんな嫌味が思いつくものね・・・)




縮こまっているネビルを哀れに思いながら、変なところに感心していた。


「おい、ハリー」


急にシェーマスがハリーの真鍮の台秤を借りようと身を乗り出してきた。


「聞いたか?今朝の『日刊予言者新聞』ーーシリウス・ブラックが目撃されたって書いてあったよ」




ゲホッ!ゴフッ!




はシェーマスの言葉に思わず咳き込んだ。


「どこで?」


ハリーが心配しての背中を擦りながら聞いた。


「ここからあまり遠くない。マグルの女性が目撃したんだ。
もち、その人は本当のことは分かってない。
マグルはブラックが普通の犯罪者だと思ってるだろ?
だからその人、捜査ホットラインに電話したんだ。
魔法省が現場に着いたときにはもぬけの殻さ」


「ここからあまり遠くない、か・・・」


ロンは曰くありげな目でハリーを見た。
はハリーにお礼を言い、それから黙り込んだ。


「僕だったら、もうすでに何かやってるだろうなぁ。いい子ぶって
学校にじっとしてたりしない。ブラックを探しに出かけるだろうなぁ」


はドラコの言葉に違和感を覚えた。


「マルフォイ、いったい何を言い出すんだ?」


ロンが乱暴に言った。


「ポッター、知らないのか?」


「なにを?」


このときドラコが一瞬ちらりとを見た。
しかしすぐにハリーに目を戻した。


「君はたぶん危ないことはしたくないんだろうなぁ。ディメンターに任せておきたいんだろう?
僕だったら、復讐してやりたい。僕なら、自分でブラックを追い詰める」


「いったいなんのことだ?」


ハリーが怒ってドラコに聞いている中、は目を見開いてドラコを見た。




(・・・引っ掛かる・・・。もしかして、知ってる・・・とか?)




しかし、そのとき、スネイプから集合が掛かった。
みんな急いで材料や用具の片づけをして、ネビルのいるテーブルに集まった。


「ロングボトムのヒキガエルがどうなるか、よく見たまえ。
なんとか『縮み薬』が出来上がっていれば、ヒキガエルはおたまじゃくしになる。
もし、造り方を間違えていればー我輩は間違いなくこっちの方だと思うが
ーヒキガエルは毒にやられるはずだ」


グリフィンドール生は恐々見守り、スリザリン生は嬉々として見物している中、
スネイプはヒキガエルのトレバーに薬を飲ませた。


一瞬あたりがシーンとなった。
と、ポンと軽い音がして、おたまじゃくしのトレバーがスネイプの手の中でクネクネしていた。
グリフィンドール生は拍手喝采だったが、スネイプはおもしろくなそうにトレバーを元に戻した。



「グリフィンドール、5点減点」


スネイプの言葉でみんなの顔から笑いが吹き飛んだ。


「手伝うなと言ったはずだ、ミス・グレンジャー。授業終了」








「ドラコ」


授業が終わると、はグリフィンドール生が怒って
教室の後ろから出て行く波を抜けて、ドラコに声を掛けた。


「何だ」


ドラコは後ろのクラッブとゴイルを先に行かせた。
教室に残ったのはとドラコ、スネイプは一番前で片付けをしていた。



「ねぇ・・・さっきー」


「ポッターに話したことか?」


察しが良いのか、ドラコが先に言ってきた。


「そうよ。誰から聞いたのよ」


「父上だ」


「やっぱりね。マルフォイ家はブラック家と近いからなぁ〜」


そんなことだろうと思った、とは苦笑した。


「じゃぁ、やっぱりも知っているのか」


「やっぱりって?」


「父上がも知っていると言ってたからだ」


「・・・はぁ・・・そう」


はどこまでーーー」




その時、軽く咳払いする音が聞こえた。
見ると、スネイプが傍に立っていた。



「君たち、話なら教室を出てからしてもらいたいものだが」



しかもを睨みながら。


「あっ、すみませんスネイプ先生」


慌てたドラコは自分の寮監に迷惑を掛けたくないからなのか


「僕はもう行くからな」


と言い残し先に教室を出て行ってしまった。
残されたのはとセブルスだけ。









「何を話してたんだ」







「貴方がもっとも嫌いな人と苦手な人の話」









意地悪くニヤリと笑いは自分を睨んでいるセブルスに言った。







〜つづく〜










◆アトガキ◆
前の話からドラコはファーストネーム描写で来てます!
リーマスやセブルスは・・・ヒロインさんと2人だけの時とかは
ファーストネーム描写ですけど;切り目が分かりにくいですね;
そして・・・やたらに蛇寮絡みますね(笑)
そして、毎度の嫌味に感心しますよスネイプ先生。











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