年に一度の大切な日 〜トリック・オア・トリート〜 「よしっ」 朝も早くからホグワーツにある厨房からはパンプキンパイの甘い匂いが 漂っている。テーブルの上には、出来たばかりのパンプキンパイと 可愛い花束、冗談で骨っこまで置いてある。 それらをバスケットに詰めて、厨房にいる屋敷しもべ妖精にお礼を言ってから はホグワーツをあとにした。 人里離れた丘。ゴドリックの谷。 見晴らしが良くとても綺麗なこの場所は、のお気に入りの場所。 だから2人のお墓もここにしたのだ。 の目の前にあるお墓。 その墓石に刻まれた名前は ジェームズ・ポッターとリリー・ポッター。 今日は2人の命日。 自分らが好きだったハロウィーンのこの日。 今日は、毎年恒例のハロウィーンパーティーもかね お昼に、シリウスとリーマスとお墓の前で待ち合わせ。 しかし今年は先客がいたようだ。 2つの墓にすでに花束が置いてあった。 1本のリボンで束ねられた綺麗な花束は、 シンプルでその人の性格が表れているようだった。 その花束を見たは、クスリと笑った。 誰が置いたのかすぐに分かったのだ。 「きっと私達に会いたくないから先にお墓参りに来たのね」 どうせ学校で会うのに、と呆れながらも 不器用だけど優しい、本人を思い浮かべながらが呟いた。 そして、その花束の横に自分の持ってきた花を置いた。 「今年も皆元気で過してるよ」 毎年している近状報告。 涼しい風がそよぐ中、は静かに墓に語りかける。 「本当はね・・・ここに来る度に涙腺やばいんだよ」 風が静かに吹く。 「でもね・・・やっぱ性に合わないでしょ」 明るく笑う。そしてバスケットから小さな袋を出した。 「ハッピー・ハロウィーン」 小さな袋を花束の横に置くと、は悪戯っぽく笑った。 「ほら、リリー!の手作りのお菓子だよ!」 「の作るお菓子は美味しいのよねv」 風が強くなり周りの木々がざわついた。 そしてどこからともなく、はしゃいだ声が聞こえた。 それは、が一番聞きたかった懐かしい声。 「ジェームズ・・・・・・?」 「久しぶり」 「リリー・・・・・・?」 「少し大人っぽくなったんじゃないの」 の振り向いた視線の先には、まぎれもなくジェームズとリリーがいた。 「・・・どう・・・して・・・?」 気が動転しているのか、言葉が上手く出てこない。 「やだなー会いに来たに決まってるじゃないか」 いつもと変わらない笑顔と口調。 何かが緩んだようにはジェームズとリリーに抱きつき、泣き始めた。 「ジェームズも・・・リリーも・・・ひっく・・・バカ! どれだけっ・・・悲しんだと思っているのよ! ・・・今日に限って・・・出てきてっ!」 の目からは涙がとめどなく溢れている。 ジェームズとリリーは滅多に泣かない親友を優しく抱きしめてあげた。 ようやく落ち着いた頃には、の目は少し赤く腫れていた。 「で?・・・なんで今日に限って来たわけ?」 は怒った顔で問い詰めた。 「今日は特別に幽霊となって来れたんだ。のためだよ」 「私のため?」 子供をあやす様な優しい口調でジェームズが言った。 は静かに耳を傾ける。風はまた静かに吹いている。 「にはね・・・私達の死の呪縛から離れて欲しいのよ」 リリーが優しく微笑みながらの手をとった。 「リリー」 「僕達の知っている、いつまでも明るく元気なでいて欲しいんだ」 彼もまた優しい笑顔だ。 「ジェームズ」 2人の言葉を聞いては思った。 1人じゃないんだ。自分の周りには皆がいる。 そしてジェームズとリリーも見守っていてくれる。 「ありがとう」 大切な親友が、立ち直れない自分を心配してくれた。 そんな2人に最高の笑顔でありがとうを言った。 遠くから犬の吠える声がした。 きっと犬の姿のシリウスとリーマスが到着したのだろう。 は声がした方を見た。ほんの一瞬の出来事だった。 しかしが視線を戻した時には、 ジェームズもリリーもそこには居なかった。 「ありがとう」 まともな挨拶もできなかったし、急に寂しくなったが いつまでも2人は見守っていてくれる。 そう思って、は2人のお墓を見て優しく微笑んだ。 シリウスとリーマスには内緒にしておこうかな。 END ◆後書き◆ この話には、ハリー達やシリウス達を しっかり出す予定だったのですが・・・; いろいろと削ったり変えたりしたので ヒロイン&ジェームズ・リリーがメインになりました。 こういうことがあったらどんなに喜ばしいことか。 幽霊になって出てきた・・・という点は 苦情や質問は笑って許してください(笑) というわけで・・・ハッピー・ハロウィーン☆ 戻る |