(あっ・・・今おでこぶつけた・・・)



私がいつも陣取る席は、彼から少し離れた後ろの席。


ここからだと彼が欠伸しているのも、眠たそうに首を揺らしているのも見える。


暖かい日差しが差し込む私が好きな時間だ。


それが今日はいつもと違った。





〜午後の授業と欠伸と揺れる君の頭〜





「隣いいか?」


ふと声を掛けられ顔を上げると、目の前に彼が居た。
そうやらいつもより遅く来たので、いつもの席は誰かに取られたらしい。
思いがけない幸運に感謝しつつ、「どうぞ」と頷いた。


「あっ、俺寝るけど気にするな」


私の隣に座ると彼は笑いながら言った。


「あっ、うん」


『いつも見てるから知ってます』なんて言えない。

隣に居る彼をチラッと見て顔が熱くなるのが分かった。





彼は授業が始まると、案の定すぐにコックリコックリし始めた。



今日の授業は集中できない。



隣で寝ている彼にばかり意識がいってしまうのだ。



暖かい光が2人を包み込み、静かな時が2人の間を流れる。



ふと見た彼の横顔。



いつも後姿しか見ていなかったから何だか新鮮。



子供のような彼の寝顔に、ふっと笑みがこぼれる。



もう少しだけ、もう少しだけこのままでいさせてください。





私の願いは空しく、授業終了のベルが鳴った。


「授業終わったよ?」


私はまだ寝ている彼を軽く揺すった。


「あっ・・・おう」


彼はゆっくり目を開け、そして大きく伸びをした。


「サンキューな」


「私は何もしてないよ」


教科書を鞄にしまいながらのやりとり。



「それと・・・」



彼がふと手を止め、私を見た。



「これから隣に座っていいか?」



「え?」


珍しく照れながら笑う彼に、私は目が離せなくなった。



の隣ってなんか落ち着くんだよな」




彼の言葉に私はさらに目を見開いた。


「で、良いか?」


「もちろん」


断る理由があるはずがない。


私は笑いながら言った。



「おーい、シリウス行くぞー」


教室のドアから彼の親友であるジェームズ・ポッターの声が聞こえた。


「じゃあな」


去り際に手を振ってくれた彼を、私は優しく見送った。



今日、午後の授業の楽しみが一つ増えました。









END














◆後書き◆
ナマエ変換1回かよっ!?(思わずツッコミ)
ヒロインさん視点ですからねー。。。
甘い恋の始まり・・・なお話でお送りしました。
あっ、後ろの席だと教室全体を見渡せて良いんですよね(笑)











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