〜地図の悪戯〜





「汝の秘密を顕せ!」


杖で地図に触れながらセブルスが唱えた。
しかし地図に何の変化も起こらない。
白紙のままの地図を、セブルスは強く叩いた。


「ホグワーツ校教師、セブルス・スネイプ教授が汝に命ず。
汝の隠せし情報を差し出すべし!」


するとまるで見えない手が書いているかのように、
滑らかな地図の表面に文字が現れた。
それを見たはまたもや口の端を吊り上げる。




「私、ミスター・ムーニーからスネイプ教授にご挨拶申し上げる。
他人事に対する異常なお節介はお控えくださるように、切にお願いいたす次第」





セブルスは硬直し、ハリーは唖然として文字を見つめた。
文字はまだ続く。




「私、ミスター・プロングズもミスター・ムーニーに同意し、さらに申し上げる。
スネイプ教授はろくでもない、いやなやつだ」





「私、ミスター・パッドフットは、かくも愚かしき者が教授になれたことに、
驚きの意を記すものである」




(ぷっ・・・!)



腹を抱えて笑いたいのを一生懸命我慢する




「私、ミス・レオファルドもさらに申し上げる。
その陰険な性格を直し、陰湿な部屋の模様替えをすることをお勧めする」





ハリーは硬直している。セブルスのこの後の反応に恐怖しているのだろう。
そして地図は最後の文字を綴った。




「私、ミスター・ワームテールがスネイプ教授にお別れを申し上げ、
その薄汚いドロドロ頭を洗うようご忠告申し上げる」





(やばい・・・笑いがっ・・・笑いが止まらない)




は肩を震わせ必死に笑いを堪える。
ハリーとセブルスはそんなに気づいていない。


「ふむ・・・片をつけよう」


セブルスが静かに言った。
そして暖炉に向かって歩き、キラキラする粉を一握り炎の中に投げ入れた。


「ルーピン!」


「セブルス、呼んだかい?」


突如炎からリーマスから現れた。
ローブについた灰を払い落とし、穏やかに言った。


「いかにも。いましがた、ポッターにポケットの中身を
出すように言ったところ、こんなものを持っていた」


セブルスは羊皮紙を指差した。
ムーニー、ワームテール、パッドフット、
プロングズ、レオファルドの言葉がまだ光っていた。
それを見たリーマスは窺い知れない表情を浮かべた。



(あはは・・・ごめん)



君がいながら。と目で訴えてくるリーマスに
はこっそり手を合わせ謝った。


「それで?」


リーマスが地図を見つめている中、セブルスが促した。


「この羊皮紙にはまさに闇の魔術が詰め込まれている。
ルーピン、君の専門分野だと拝察するが。
ポッターがどこでこんなものを手に入れたと思うかね?」


「セブルス、本当にそう思うのかい?
わたしが見るところ、無理に読もうとするものを侮辱するだけの
羊皮紙に過ぎないように見えるが。子供だましだが、決して危険じゃないだろう?
ハリーは悪戯専門店で手に入れたのだと思うよ」


「そうかね?悪戯専門店でこんなものをポッターに売ると、そう言うのか?
むしろ、直接に製作者から入手した可能性が高いとは思わんのか?」



(どういう意味?というか私を見て言うな)



何故かを見て言うセブルス。
そして言葉の真意を理解できない
ハリーもリーマスも分からないと言った顔をしていた。


「ミスター・ワームテールとか、この連中の誰かからという意味か?
ハリー、この中に誰か知っている人はいるかい?」


「いいえ」


ハリーは急いで答えた。


「セブルス、聞いただろう?わたしにはゾンコの商品のように見えるがね」


合図を待っていたかのように、ロンが研究室に息せき切って飛び込んできた。



(ナイスタイミングだな・・・)



「それー僕がーゾンコで随分前に買ってーハリーにあげたんです」


「ほら!」


ルーピンは手をポンと叩き、機嫌よく周りを見回した。


「これではっきりした!セブルス、これはわたしが引き取ろう。いいね?」


リーマスは地図を丸めてローブの中にしまい込んだ。


、ハリー、ロン、おいで。バンパイアのレポートについて話があるんだ」


失礼するよ、そう言ってリーマスは2人を引き連れて研究室を出て行った。
も丸め込まれたセブルスを見るのも恐ろしいので、3人の後を急いで追った。






は暫くして玄関ホールで話す3人に追いついた。


「スネイプは、どうして僕がこれを製作者から手に入れたと思ったのでしょう?」


「それは・・・」


リーマスは口ごもった。
そしてチラリとを見る。


「それは、この地図の製作者だったら、君を学校の外へ誘い出したいと
思ったかもしれないからだよ。連中にとって、それがとても面白いことだろうからね」



(一理あるわね)



リーマスのフォローにはクスリと笑う。


「先生は、この人たちをご存じなんですか?」


「会ったことがある」


ハリーの質問にリーマスはぶっきらぼうに答えた。
そして真剣な眼差しでハリーに忠告、というかお説教をした。


その言葉が効いたのか、とぼとぼと先にグリフィンドール塔に戻っていく
惨めな気持ちになったハリーとロン。
それを見送り、静かな玄関ホールに残るのはとリーマス。




「君が傍にいるのにどうしてこうなったのかな?」


心なしか黒いものが混じっているリーマス。
は久しぶりのブラック降臨に少々怯える。


「今回は私がちゃんと私が止めてなかったから起きた不祥事です。
すみません・・・はい」


怒らせてはいけないと、謝るだが急いで弁解をする。


「でもこっちだって大変だったんだよ!
セブが昔のことグチグチ言うからハリーの前で地が出そうになるし!
・・・いや・・・地出ちゃったのかな・・・?」


あはは、と乾いた笑いをする
リーマスは呆れて溜息をついた。



バサッバサッ



その時1羽の梟が飛んできて、に手紙を落としていった。


「誰からだろう?」


そう言って届いた手紙を開く
隣のリーマスも覗き込む。





俺たちが負けた。バックビークはホグワーツに連れて帰るのを許された。
処刑日はこれから決まる。
ビーキーはロンドンを楽しんだ。
おまえさんが俺たちのためにいろいろ助けてくれたことは忘れねえ。
ハグリッドより
 




手紙は湿っぽく、大粒の涙の跡でインクがひどく滲み読みにくかった。




「・・・」




グシャリと手紙を握ったを心配そうに見るリーマス。
は何も言わずに急いでグリフィンドール塔を目指した。











つづく

















◆後書き◆
続けて気合入ってます(笑)
リーマスとの会話の中にこんなのもいれてみたかった・・・↓



「ねぇ・・・地図の文章読んだ?」

突然話題を変える

「読んだよ」

すかさず返事を返すリーマス。
2人はニヤリと笑い声をそろえた。

「「笑い死にしそうだった」」

「やっぱりあの魔法掛けておいて正解だったね」

「そうねあの文章、我ながらアッパレだわ」

クスクスと笑いあうとリーマス。
表では何もないようにしていたが
先ほどのセブルスに対する敬意を払った文章に
裏ではお腹を抱えて笑いたいほどだった。













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