我らの血筋と地位の栄光は 影にして実体なきもの。 運命に抗する鎧はない。 死はその氷の手を王たちの上にもおく。 王笏も王冠も かならず転げ落ち 土のなかに入ってしまえば みじめに曲がった鎌や鋤と同じものとなるのだ。 (ジェイムズ・シャーリー『アイアスとユリシーズの争い』より) 〜お空で一番輝く星〜 「・・・・・・・」 新学期が始まってすぐ、悪戯仕掛け人であるは異変に気が付いた。 「ねぇ、ジェームズ?」 つらい授業も終えて生徒は眠りに付く夜の談話室で、 耐え切れなくなったが口を開いた。 「なんだい?言っとくけど、待ったはなしだよ」 とチェスをしている目の前のジェームズが答える。 チェスはやはりジェームズの方が優勢である。 「待ったなんてしないわよ!そうじゃなくて。あれよ・・・ヘタレよ、ヘタレ」 大きな声を出したものの、は急に声を落として問題の人物をちらりと見た。 「あぁ・・・あいつね」 つられたジェームズも声を落とす。 「新学期入ってから変じゃない?」 「あー・・・まぁ・・・夏休みにいろいろとね」 「夏休みに?」 ジェームズはの問いにチェスをしていた手を止めた。 「僕が言っても良いのかってところだけど・・・ シリウス、夏休み中に家で喧嘩して家出したんだよ。 まぁ、残りの夏休みの間はうちに来てたんだけど」 ジェームズの言葉に、は思わずナイトの駒をポロリと落とした。 「いっ、いえっ!?ふぐっ!」 「、声でかい!」 慌てての口を塞ぐジェームズ。 「ごめん;・・・家出か・・・原因は?」 16歳で名家を家出・・・なんてファンタスティック!!(ぇ) の思考はよく分かりません。 「家の問題だよ。ほら、ブラック家ってアレだろ?」 「そうね。シリウスの家ってアレだものね」 アレって何さっ!? 「シリウスは・・・プライド高いからな」 言葉では呆れているが、やはり親友を心配しているのだ。 そんなジェームズを見て、はそっと立ち上がった。 「チェスはしばらくお預けね」 笑いながらそれだけ言うと、はシリウスの方へ歩いていった。 「反対には・・・お人よし過ぎるね」 の後姿を見ながらジェームズは小さく微笑んだ。 「シ〜リ〜ウ〜ス〜」 意味もなく後ろから回り込んでみる。 「ん?なんだ・・・か」 振り向いたシリウスは力のない返事をした。 「なんだとは失礼ね。ねぇ、ちょっと付き合ってくれない?」 のその言葉にシリウスはいち早く反応した。 「、やっとその気になってくれたか!」 さりげなくの肩に手を回しているシリウス。 「は?何の話よ!何の!」 「何って、やっと俺の愛を受け取ってくれたんだなってーーー」 バキッ 「んで?何か言った(黒笑み)」 「いえ、なんでもありません」 良い音したね、さっき(笑) 「ちょっと散歩に付き合って欲しいだけよ」 さっきの黒さをコロリと変えてが言った。 「ちっ・・・まぁ、とならどこでもいいけどよ」 今さりげなく舌打ちしなかった? 気のせいだろ? 「んじゃ行こう」 そう言って、はシリウスを引っぱり談話室を出て行った。 「おい」 「何よ」 シリウスが声を掛けたので、は立ち止まった。 「散歩って・・・ここ屋上じゃねぇーか;」 「そうだけど?」 そう、とシリウスが今居る場所は、悪戯仕掛け人しか知らない塔のてっぺん。 見晴らしがいいわけか、空には幾千もの星がちりばめられている。 「こんな所で何すんだよ」 「まぁ、良いからここに座って」 そう言うにシリウスは大人しく座った。 その横にも座る。 「まっ、ぶっちゃけシリウスとお話したかっただけなんだけどね」 あははと笑うにシリウスはやはりー 「・・・やっぱり俺と愛をーーー」 ボキッ 「バカ言ってるんじゃないの!」 本日2回目の愛の裁き(笑) 「まったく。・・・・あっ、シリウス見て!シリウス発見!」 突然空を指差す。 「俺って・・・なんだ星か」 が指差した空を見上げると、空の中でも一際輝いているシリウスがあった。 「シリウスって全天で一番輝いているんだよね?」 「あぁ。俺とは反対だな」 シリウスは苦笑した。 「反対?」 「ジェームズから聞いたんだろ?家出のこと」 「・・・うん、ごめん聞いた」 「まっ、別に隠すつもりは無いからな」 シリウスはちらりとを見て、再び空に視線を移した。 「もうたくさんだった」 シリウスが静かに話し出す。 「家に居れば純血がどうだマグルがどうだとか・・・。うんざりなんだよ」 「・・・・・・・」 シリウスが自分の家の話をするのってあんまり無いわね。 そんなことを思いながらはシリウスの話を静かに聴いていた。 「あの家なりの優秀さで育って欲しかったんだろうけど・・・ 俺はブラック家では落ちこぼれだからな・・・」 笑えるな、とシリウスは少し肩をすくめた。 そんな少し寂しそうな顔のシリウスを見て、は静かに言った。 「そんなことないよ」 「え?」 「落ちこぼれなんかじゃないよ。シリウスはシリウスだもの」 は真っすぐにシリウスを見た。 「ブラック家の事情はよく分からないけど、シリウスは・・・ 頭が良いし、カッコ良いし、ヘタレだけど優しいしーーー」 「どこにいてもそうだけどーーー」 「私の中では一番輝いてるもの」 はシリウスに優しく微笑んだ。 「」 本当は誰かに言ってもらいたかったーーー 自分を必要としてくれる一言をーーー 愛とか温もりを与えて欲しかったーーー ずっとずっと暗いところから出られなかったーーー でもーーー 今はーーー 俺の一番欲しかったものを君がくれるーーー 自分を必要としてくれるーーー 君が俺を照らしてくれているーーー シリウスはを抱きしめると泣きそうな顔で小さく笑った。 「ありがとな」 END ◆後書き◆ 氷室様に愛を込めて贈る、相互記念夢です! 氷室様!本当に遅くなりました!スミマセン! へたれっぽいシリウスじゃなくてすみません; しかも5巻のブラック家の渦巻く事情を取り入れてしまって・・・ ネタバレみたいな感じになってしまいましたが;(涙) こんなシリウスも良いなぁ〜と思う今日この頃。 こんな奴でも、これからも宜しくお願します。 戻る |