〜メガネ論〜
「ごめんね、私の方まで巡回手伝ってもらっちゃって」
誰も居ない夜の廊下。
本来なら自分たちも寮の寝室に居る時間なのだが
校内の見回りも監督生の役目だから仕方がない。
「気にしなくていいよ。暗い廊下を女の子1人で歩かせるわけにはいかないから」
「リーマスってば紳士〜」
どっかの誰かさんとは大違い、とは溜息をつく。
その言葉にリーマスは苦笑しながら肖像画を開けた。
2人が中に入ると、夜遅く誰も居ないはずの談話室に2つの人影が視界に入った。
「あれ?ジェームズとシリウス?」
近づいたは目を丸くする。
「もしかして、僕らを待っててくれたとか?」
リーマスもソファに近づきジェームズとシリウスを覗き込む。
待っててくれるのは有難いが、2人はいつの間にか寝てしまったようだ。
「先に寝てて良いって言ったのに」
は溜息をつきながら、眠ってしまっているジェームズとシリウスを見る。
「起こすのも酷だね」
「う〜ん・・・寝顔が拝めるのもそうないからね」
2人を起こしてしまわないように静かに言葉を交わすとリーマス。
の顔は悪戯を思いついた子供のようだった。
は静かに寝ているジェームズの横に腰を下ろし、顔を覗き込む。
「ん?ねぇリーマス」
「なんだい?」
「ジェームズって寝るときも眼鏡してるの?」
「いや、寝ているときは外してるけど」
「ふーん」
リーマスの言葉を聞いて、はそっとジェームズの眼鏡を外した。
そしてなんとなく自分が掛けてみる。
「うわっ・・・何この眼鏡・・・度が強すぎっ!」
どんだけ視力悪いんだ、とはクラクラする視界を直すために急いで眼鏡を外した。
「そういえば、眼鏡の人がコンタクトに変えると新鮮だよね」
「そう?」
突然のの発言にリーマスは疑問で返した。
「そうそう。昨日だって突然マイケルが眼鏡からコンタクトにしたの見て吃驚したもん」
「レイブンクローの?」
うん。イメチェンだって〜、とは笑いながら言った。
手にはまだジェームズの眼鏡が握られている。
「逆にリーマスだって眼鏡似合いそうだし」
眼鏡を掛けたリーマスが図書館にいたら絵になるだろう。
小さく欠伸をしながらはジェームズに眼鏡を掛け戻した。
「ごめん、もう寝るね〜」
「えっ?ジェームズ達どうするの?」
眠い目をこするを見てリーマスが言った。
リーマスだけで2人を担いで男子寮に行けるはずがない。
しかし、自分も眠いし男1人担ぐ力もない。
はリーマスと寝ているジェームズとシリウスを交互に見てから口を開いた。
「う〜ん・・・そのままにしても大丈夫じゃない?あとはリーマスに任せる!」
じゃっ、と言ってわざとらしく敬礼して女子寮の階段を駆け上がる。
要するに逃げた。
が去る音が止むと、ソファの上で動く気配がした。
振り返ったリーマスは少し驚いた顔をした。
「はぁ・・・」
それと同時にリーマスは、この状況に盛大な溜息をついた。
翌朝。
寝坊しそうなを同室のリリーが叩き起こし、
朝食を取るべく大広間に向かった。
そこには既にジェームズ達が居て、達の場所を取っておいてくれてあった。
とリリーは空いた席に座ると、おはよう、と挨拶をした。
「酷いよ、僕は君を待ってたのに〜」
の目の前に座っているジェームズが嘆く。
ふと喋ったジェームズを見るとは目を丸くした。
「ジェ、ジェームズ!?眼鏡はどうしたのよっ!?」
思わず大声を上げる。
それもそのはず、目の前の彼はトレードマークである眼鏡を掛けていない。
どうりで周りがうるさいわけだ。
「コンタクトにしたんだとよ」
横でベーコンエッグを食べているシリウスが呆れながら言った。
「たまには気分転換」
眼鏡を掛けていないジェームズが笑いながら言った。
そこへリーマスがにこっそり話した。
「昨日の君の眼鏡の話を聞いてたんだよ」
「はぁー!?」
どうやら昨日とリーマスが談話室に戻ってきた時に、
彼らは狸寝入りしていたらしい。
なかなか起きるタイミングがなくてそのまま寝たふりをしていたらしい。
(・・・コンタクト・・・ねぇ・・・)
まさかジェームズに聞かれていたとは。
しかもご丁寧に実行までしてくれて。
あれか?昨日見捨てた嫌がらせか?
は眼鏡を掛けてないジェームズを見て呆れた。
1日の授業を終えて、達は談話室でくつろいでいた。
が、どうにもこうにもは1日中不機嫌だった。
ジェームズの方を見るたびにイライラしていた。
「あぁーもう!やっぱりおかしい!」
ついに我慢できなくなり、は目の前のテーブルを叩いた。
「何がだい?」
原因の本人がのん気に反応する。
ジェームズとての機嫌が悪い理由を知らないわけではない。
の反応が面白いのでそのままにしているだけだ。
「アンタよ!アンタ!もういい加減眼鏡掛けて!」
「えぇー新鮮で良いって言ったのはじゃないか」
「あれは他の人が対象よ!大体人の話盗み聞きするな!」
「盗み聞きじゃないよ、寝たふりしてただけだし」
「同じよ!」
ズビシッとが言う。
「それにジェームズは眼鏡じゃないと嫌なの!」
・・・・・・。
「もう一回言って」
一瞬間が空き、驚いた顔でジェームズがを見た。
「は?」
「さっきの言葉もう一回言って」
「ジェームズは眼鏡じゃないと嫌?」
「聞いたかい!シリウス!」
突然話を振られたシリウスは、読んでいる雑誌から目を離し、何だ、と答えた。
シリウスの方を見てジェームズはいたって真面目な顔をしてこう言った。
「が結婚するなら僕じゃないと嫌だって!」
「んなこと言ってないしっ!!!!!」
ドガッとはジェームズに跳び蹴りを食らわす。
「はいはい。痴話喧嘩なら向こうでやってくれ」
吹っ飛ばされたジェームズを見てシリウスは再び雑誌に目を落とした。
「跳び蹴りは酷いよ〜」
「私の言葉を勝手に脳内で変換したアンタが悪い!」
スタッと復活したジェームズを睨みながらが怒鳴る。
「しょうがないな・・・眼鏡、眼鏡」
少し不満そうなジェームズはポケットから眼鏡を取り出し掛けた。
眼鏡に戻ったジェームズを見て満足そうには頷いた。
「うんオーケー。もう変な気起こさないでね」
「しないよ。があんな大胆な告白してくれたんだからね」
「告白じゃないわよ」
少し顔が熱くなるのを感じたはそっぽを向いた。
ジェームズに眼鏡がないと落ち着かない自分がいるのと同時に、
本当は眼鏡を掛けてないジェームズを見てカッコイイと外野で
叫んでいた女子が嫌だったから・・・なんて恥ずかしくて言えないだった。
END
◆後書き◆
ちょっと強制終了気味に;
やってみたかった眼鏡ネタ。
やっぱり眼鏡フェチの私にとっては
必ず通らないといけない道ね(笑)
何とでも言ってやってください。。。
戻る
|